2014/08/19

月と篝火 / チェーザレ・パヴェーゼ


 【作品データ】
題名:月と篝火
文献: 岩波文庫
作者:チェーザレ・パヴェーゼ(1908-1950)訳:河島英昭
分類:イタリア文学
発刊:2014年オリジナルは1949年

パヴェーゼが好きになったのは、ネオレアリズモの美しさを知った「故郷」だったり、「流刑」における大地を踏みしめる素晴らしさだったり、失われた光を見出せる「美しい夏」、それらを凝縮した「祭の夜」で、マイナー作家とも言われる理由もないのになぜか「月と篝火」の文庫化が遅かった。
「パヴェーゼ文学集成」の三巻を何度も買おうか悩んでいた矢先のこと、唐突に文庫化が実現されたことの喜びは拭えない。
また今回の岩波文庫で訳者の河島英昭の解説が充実していることも嬉しい。
誰もが知っているように、「月と篝火」はパヴェーゼ最後の長編小説で、わずか二ヶ月足らずで書き上げている。「自殺直前の代表作」とも言われているが、執筆期間の日記「生きるという仕事」をかいつまんで見ると、進行中の作品と相反するとも思えるような思想が窺える。
この本はとても良い意味で大人向けの本である。
肉体的な実年齢でいえば四十代後半、それ以降の年齢に達した者がより大きな感動を与えられるだろうと思う。これはファシズムやレジスタンスの話でもないし、貧しい者たちの話でもない。
「大地を目覚めさせるのは」と、いきなり立ち上がって確固として言い放つこと。
「それならば、きみも月を信じるのかい?」という問いかけ、
「故郷は必要なのだ、たとえ立ち去る喜びのためだけであっても」
 これらの言葉に一体何が満ちているというのか。私は言葉にできない。
ただ、長い夏の夕べを、いつもと同じように葡萄畑や空を見つめていることを、 私が泣くほどに揺さぶられるのは、 榛の茂みの下で、いちじくの木の下で、ほかでもない私が同じ空を見つめていたからだ。
月と篝火 (岩波文庫)>>>

2014/06/06

シンプルメン / ハル・ハートリー

                                                  シンプルメン [DVD]

【作品データ】
題名:シンプルメン
原題:simplemen
公開:1992年アメリカ
監督:ハル・ハートリー
制作:テッド・ホープ/ハル・ハートリー
脚本:ハル・ハートリー
出演:ロバート・ジョン・バーク/ビル・セイジ/エリナ・レーヴェンソン/マーティン・ドノヴァン

つまらないといえば、断然つまらないような気さえするのに、何が魅力かときかれれば、黙っているしかない
それでも何で、わざわざ見に行くのかと問いつめられれば、それを考えているのだから暇なら見てくればいいだろう?という感じである。
どう考えても、面白いというにはいささか抵抗を抱える
同じアメリカのインディペンデントであるカサヴェテスほどの、メロドラマのなかのクールさでいえば役不足であるし、メロドラマといえばそうなのだが、ダンス・シーンの挿入の唐突さはまるで不器用なほど、というか、まさかこれだけを撮りたかったのかと疑ってしまう
「汚れた血」のジュリエット・ビノシュほどの強烈な魅力を放つエリナ・レーヴェンソンには、誰だって抗えないほど惹き付けられるだろうが、本当にそれだけなのだろうか。

2014/06/04

アンビリーバブル・トゥルース / ハル・ハートリー

アンビリーバブル・トゥルース [DVD]


【作品データ】
題名:アンビリーバブル・トゥルース
原題:The Unbelievable Truth
公開:1989年アメリカ
監督:ハル・ハートリー
制作:ブルース・ウェイス/ハル・ハートリー
脚本:ハル・ハートリー
エイドリアン・シェリー/ ロバート・バーク

久々のアメリカ映画は魅力的なエイドリアン・シェリーで魅了された。
映画といえば、その監督がすべてであり、キャストの中にいくら大物がいるにしろ、監督がどうも気に入らないと見る気にもなれない。
だから、知らない監督の映画を見るのは、まったく未知の世界でハル・ハートリーなんてどんなものかと、四作上映するうちの一作をとりあえず、見にいってみたのだ。
40年代ハリウッドでもなければ、カサヴェテスでもない、アメリカ映画である。単純明快すぎる物語調に、飽きもせずスクリーンを凝視し続ける理由が不明瞭にしろ、アメリカ映画も悪くないと思った。DVD発売記念公開での上映。





2014/06/02

神の裁きと訣別するため/ アントナン・アルトー


【作品データ】
題名:神の裁きと訣別するため
文献: 河出文庫
作者:アントナン・アルトー(1896-1948)
分類:フランス文学
発刊:2006年オリジナルは不明

アントナン・アルトーが誰か、という確信的な問いかけを投げかけられ易いのは、その酔いしれるようなエクリチュールよりも、カール・ドライヤーの世にも美しい映画「裁かるるジャンヌ」(1927年)での神父の顔を知っているからだろう。神々しいほどの詩的さをもって、人間の生なるものおよび器官に浸透する、それらに革命を起こそうとしているかのごとく、攻撃的に追求することの甘美さを感じることができるのだ。

神の裁きと訣別するため (河出文庫 (ア5-1))